タイで現地就職するために必要なビザ・ワークパーミットの取得方法
タイで現地就職をする場合、合法的に滞在しながら働くためには、原則として「ノンイミグラントBビザ」と「ワークパーミット(労働許可証)」の両方が必要です。
ノンイミグラントBビザは、タイに就労目的で入国・滞在するための資格です。一方、ワークパーミットは、タイ国内で実際に働くことを許可するものです。
それぞれ役割が異なるため、ノンイミグラントBビザを取得しているだけでは、原則として仕事を開始することはできません。適切な滞在資格に加え、ワークパーミットを取得してから就業を開始する必要があります。
一般的な手続きは、次の流れで進みます。
「タイ国外でノンイミグラントBビザを取得」
→「タイへ入国」
→「タイ国内でワークパーミットを取得」
→「滞在許可期間を延長」
ただし、BOI認定企業や特定のビザ制度を利用する場合は、通常とは異なる手続きが適用されることがあります。
タイ現地就職におけるビザ・労働許可取得の全体フロー
【Step 1】内定獲得と必要書類の準備
タイの企業から内定を受け、雇用条件が決まったら、ノンイミグラントBビザやワークパーミットの申請に必要な書類を準備します。
必要書類は、勤務先企業の区分、職種、申請先、本人の経歴などによって異なります。
本人が準備する主な書類
・パスポート
・証明写真
・英文またはタイ文の履歴書
・英文の卒業証明書
・英文の職歴証明書
・雇用契約書
・その他、勤務先や申請機関から指定された書類
パスポートには、申請時点で一定の残存有効期間が求められます。一般的には6か月以上が目安とされますが、申請前に最新の条件を確認してください。
卒業証明書や職歴証明書については、原本、英訳、公証、認証などを求められる場合があります。前職の退職証明書が職歴証明書の代わりとして認められるかどうかは、申請先の判断によって異なります。
採用企業が準備する主な書類
・会社登記関係書類
・株主名簿
・付加価値税登録書類
・法人税関係書類
・財務諸表
・タイ人従業員に関する書類
・雇用契約書
・外国人雇用に関する申請書類
一般企業では、必要に応じてタイ労働当局から外国人雇用に関する事前承認書類を取得します。
BOIの投資奨励を受けている企業の場合は、BOIのシステムやワンストップサービスを通じた、一般企業とは異なる手続きが適用されることがあります。
【Step 2】ノンイミグラントBビザを申請する
タイ国外にいる場合、勤務先企業から必要書類を受け取り、ノンイミグラントBビザを申請します。
日本から申請する場合は、原則としてタイ政府の「Thai e-Visa」を利用したオンライン申請となります。
主な流れは次のとおりです。
1.Thai e-Visaのポータルサイトでアカウントを作成する
2.申請フォームに必要事項を入力する
3.パスポートや雇用関係書類などをアップロードする
4.申請料金を支払う
5.審査結果を待つ
6.承認後に発行されるe-Visaの確認書を受け取る
審査期間は、申請先、時期、申請内容、追加書類の有無などによって異なります。
書類の不備がある場合は、追加提出を求められたり、審査に時間がかかったりすることがあります。渡航予定日まで十分な余裕を持って申請しましょう。
申請が承認されると、e-Visaの確認書がPDF形式などで発行されます。タイへの渡航時に提示できるよう、印刷または保存しておきます。
【Step 3】ノンイミグラントBビザでタイへ入国する
発給されたノンイミグラントBビザを使用して、タイへ入国します。
シングルエントリーのノンイミグラントBビザで入国した場合、一般的には、入国日から最長90日間の滞在が許可されます。
ただし、「ビザを使用して入国できる期間」と「入国後に滞在できる期間」は異なります。
実際にいつまで滞在できるかは、入国時に付与された滞在許可期限を必ず確認してください。
また、この時点では、タイに就労目的で滞在する資格を得た段階です。ワークパーミットを取得する前に実際の業務を開始すると、不法就労と判断される可能性があります。
原則として、ワークパーミットの発給後に就業を開始します。
【Step 4】ワークパーミットを申請・取得する
タイ入国後、勤務先企業の人事担当者、会計事務所、法律事務所、ビザ代行会社などが中心となり、ワークパーミットの申請を進めます。
近年は「e-WorkPermit」の導入により、労働許可申請のオンライン化が進められています。
申請方法や本人確認の方法、許可情報の受け取り方は、勤務先企業の区分や申請先によって異なります。
そのため、必ず勤務先企業や申請担当者の指示に従ってください。
健康診断書の取得
ワークパーミット申請では、タイ国内の病院やクリニックが発行した健康診断書を求められることがあります。
健康診断書の書式や検査項目は、申請先や申請時期によって異なる可能性があります。
一般的な健康診断書ではなく、ワークパーミット申請用の診断書が必要になるため、受診前に勤務先や申請担当者へ確認しましょう。
労働許可申請
勤務先企業が、会社関係書類や本人の書類をそろえて申請を行います。
申請内容によっては、本人確認、写真撮影、電子署名、窓口への訪問などが必要になる場合があります。
ワークパーミットには、勤務先、職種、役職、勤務地などの就労条件が登録されます。
許可された内容と異なる会社、職種、勤務地で働く場合は、変更手続きや新たな申請が必要になることがあります。
【Step 5】滞在許可期間を延長する
ノンイミグラントBビザで入国した際に認められた滞在期間は、通常90日以内です。
タイで継続して働く場合は、滞在許可期限が切れる前に、入国管理局で就労を理由とした滞在期間延長を申請します。
一般的な現地採用の場合、通常は最長1年間の滞在期間延長を申請し、雇用が継続する場合は、その後も更新手続きを行います。
正確には「ビザそのものを1年間延長する」のではなく、タイ国内で認められている滞在許可期間を延長する手続きです。
申請には、ワークパーミット、雇用証明、給与証明、納税関係書類、勤務先企業の会社書類などが必要になります。
延長期間や必要書類は、企業区分、給与、役職、資本金、タイ人従業員数などによって異なります。
タイ滞在中に必要となる主な手続き
ワークパーミットと滞在期間延長を取得した後も、タイで継続して生活・就労するためには、いくつかの手続きが必要です。
90日レポート
タイに連続して90日を超えて滞在する外国人は、原則として90日ごとに現在の居住地を入国管理局へ報告する必要があります。
一般的には、次の方法で手続きできます。
・オンライン
・郵送
・入国管理局の窓口
・勤務先や代行業者による手続き
タイ国外へ出国し、再入国した場合は、90日の起算日が変わります。
提出期限や申請方法は変更される可能性があるため、入国管理局の最新情報を確認してください。
リエントリーパーミット
滞在期間延長の許可を受けている人が、一時帰国や海外旅行のためにタイ国外へ出る場合は、出国前にリエントリーパーミットを取得する必要があります。
リエントリーパーミットを取得せずに出国すると、原則として、それまで認められていた滞在許可を維持できなくなります。
リエントリーパーミットには、主に次の2種類があります。
・シングルリエントリーパーミット
・マルチプルリエントリーパーミット
1回だけ出国・再入国する場合はシングル、滞在許可期間中に複数回出入国する場合はマルチプルが一般的です。
入国管理局や一部の空港などで申請できますが、出国当日の手続きでは時間がかかることもあります。できるだけ事前に取得しておきましょう。
TM30の居住地報告
外国人がタイ国内の住居に滞在する場合、家主、ホテル、コンドミニアムの管理者などが、入国管理局に居住地を届け出るTM30という手続きがあります。
ホテルでは通常、施設側が手続きを行います。
賃貸コンドミニアムやアパートに住む場合は、オーナーや管理会社が手続きを完了しているか確認しておきましょう。
TM30の報告状況は、滞在期間延長や90日レポートなどの手続きに影響することがあります。
日本人がタイで就業する際の主な条件と注意点
日本人の最低給与基準
一般的な現地採用の日本人が、就労を理由として滞在期間を延長する場合、原則として月額50,000バーツ以上の給与が、入国管理局による審査基準の一つとなります。
ただし、月額50,000バーツという基準は、主として滞在期間延長の審査に関するものです。
ワークパーミット自体に、一律で同じ最低給与額が設定されているという意味ではありません。
また、BOI認定企業、特定のビザ制度、職種、役職などによっては、異なる条件が適用される可能性があります。
日本円に換算した金額は為替レートによって変動するため、求人情報を確認する際は、バーツ建ての月給を基準に判断しましょう。
企業の資本金とタイ人従業員数
一般的な非BOI企業が外国人を雇用する場合、審査基準として次の条件が求められることがあります。
・外国人1名につき、払込資本金200万バーツ以上
・外国人1名につき、タイ人従業員4名以上
ただし、これらはすべての企業や外国人に一律で適用されるわけではありません。
BOIの投資奨励を受けている企業、IEATの対象企業、タイ人配偶者がいる外国人などには、異なる基準や例外が適用されることがあります。
資本金やタイ人従業員数の条件は、ワークパーミットと滞在期間延長で確認される内容が異なる場合もあります。
外国人が就業できない職種
タイでは、タイ人の雇用や伝統的な職業を保護する目的で、外国人が原則として従事できない職種や、一定の条件のもとでのみ従事できる職種が定められています。
例として、次のような仕事が挙げられます。
・観光ガイド
・運転手
・理容・美容に関する業務
・タイ式マッサージ
・単純労働
・一部の事務・秘書業務
・伝統工芸に関する業務
ただし、禁止・制限される範囲は、職種名だけではなく、実際の業務内容によって判断されます。
例えば、管理職として採用されていても、許可された役職や職務内容を超えて、禁止業務に直接従事することはできません。
求人への応募前に、勤務先企業が外国人を合法的に雇用できる職種かどうかを確認することが重要です。
許可された会社・職種以外では働けない
ワークパーミットを取得していても、原則として、許可された勤務先、役職、職種、勤務地の範囲内で働く必要があります。
副業や複数企業での勤務を希望する場合は、別途手続きが必要になる可能性があります。
ワークパーミットを持っているからといって、タイ国内で自由にあらゆる仕事ができるわけではありません。
転職、異動、職種変更、勤務地変更が発生した場合は、勤務先企業や専門家に確認し、必要な変更手続きを行いましょう。
ビザやワークパーミットの費用は誰が負担するのか
ビザ、ワークパーミット、健康診断、書類認証、代行手数料などの費用負担は、企業によって異なります。
勤務先企業がすべて負担するケースもあれば、本人が一部または全額を負担するケースもあります。
内定を承諾する前に、少なくとも次の点を確認しておきましょう。
・ビザ申請費用の負担者
・ワークパーミット申請費用の負担者
・健康診断費用の負担者
・代行会社への手数料の負担者
・更新費用の負担者
・退職時のビザ・ワークパーミット取消手続き
・一時帰国時のリエントリーパーミット費用
退職・転職時の注意点
タイで退職する場合、勤務先企業はワークパーミットや就労に基づく滞在許可の取消手続きを行います。
退職後も、現在のビザや滞在許可期限までそのままタイに滞在できるとは限りません。
退職日や取消手続きの日程によっては、短期間で出国、滞在資格の変更、または新しい勤務先での手続きが必要になります。
タイ国内で転職する場合も、旧勤務先のワークパーミットをそのまま新しい勤務先で使用することはできません。
転職先が決まった段階で、旧勤務先、新勤務先、ビザ代行会社などと相談し、手続きの順番を調整することが重要です。
手続きは内定先企業と連携して進めよう
タイの就労ビザやワークパーミットの手続きは、必要書類が多く、企業区分や本人の状況によって申請方法も異なります。
実務上は、内定先企業の人事担当者や、企業が契約している会計事務所、法律事務所、ビザ代行会社が中心となって手続きを進めるケースが一般的です。
求職者がすべてを一人で判断して準備するのではなく、内定を受けた段階で、次の点を企業へ確認しましょう。
・ノンイミグラントBビザの取得方法
・必要な本人書類
・卒業証明書や職歴証明書の認証方法
・ワークパーミットの申請時期
・就業開始予定日
・滞在期間延長の手続き
・費用の負担範囲
・家族帯同に必要なビザ
・退職や転職時の対応
タイのビザや労働許可に関する制度は、法改正や行政運用によって変更されることがあります。
実際に申請する際は、タイ大使館・総領事館、タイ入国管理局、タイ労働省、BOI、勤務先企業、専門の代行会社などから、最新情報を確認してください。
※本記事は法的助言を行うものではありません。最新情報は必ずご自身で確認してください。
